家計診断Q&A

家計診断Q&A


転職後に収入が減り、月々のやりくりは赤字に・・・
住宅を購入したいが、買っても大丈夫?


市田 雅良先生
(いちだ まさよし)
プロフィール
教育費用や住宅取得費用は、貯蓄の取り崩しではなくライフプランで乗り越えよう

住宅ローン金利が上がるという不安はありますが、焦らず住宅ローンの研究からはじめよう

60歳の金融資産目標として、2,000万円を目安に貯蓄と投資を

高橋 道夫さん(仮名)のご相談

昨年転職をしたころ、年収が落ちました。でも、秋には実習期間が終わり本採用となるので、給料額が決まります。できればそのとき賃金アップの交渉をしたいと思っています。
子供2人の成長は著しく、何かと手狭になってきましたので、2年後には、家も取得したいと思っています。
金融資産は2,600万円ほどあるのですが、現在の家計の収支は月々マイナスとなっていて、ボーナスでまかなっている状態です。今後子供の教育費と住宅ローンが重なるとしたら、どれだけ目減りしていくのかと不安です。

高橋さん(仮名)のプロフィール
37歳 、会社員。パート勤務の奥様と5歳と3歳のお子様との4人で、賃貸住宅にお住まい

現在の所得と収支状況
世帯主の収入
支出の部
 給与収入
436万円
 日常の生活費
192万円
 その他収入
0万円
 教育費
23万円
 社会保険料・税
38万円
 住宅費
102万円
 可処分所得
398万円
 生・損保保険料
65万円
配偶者の収入 
 貯蓄額
41万円
 給与収入

40万円

 その他費用
15万円
 その他収入
0万円
 使途不明金
0万円
 社会保険料・税
0万円
  (日常の生活費は、食費・高熱水道費・
 被服費・通信費・交通費・医療費・家事用品・
  交際費・小遣い等)
 可処分所得
40万円
 可処分所得 合計 438万円  支出 合計
438万円



年間収支のマイナスが暫く続くので、プランどおりに実行できるかどうかがポイントとなります
 
1.家計の現状と将来予測

「貯金ゼロ」の家計が増えています。「金融広報中央委員会」が約1万世帯を対象に実施した「家計の金融資産に関する世論調査」によると、「貯金を保有していない」という回答が23..8%(2人以上の世帯)あり、1世帯の平均貯蓄額は1085万円。貯蓄額が「増えた」と答えているのはわずか19.8%で、逆に「減った」という回答は47%に及んでいます。つまり、多くの世帯は「限られた貯金を食いつぶしているのが実態だといえそうです。

高橋家の金融資産は、平均値よりもかなり上にあるといえます。ところが、キャッシュフロー表<表4>をみていただくと、今後年間収支が赤字続きになるのがわかります。ここに不安を持たれているようです。月々の月間収支がマイナスなのでボーナスでまかなっているとはいえ、年間トータルで考えると、キャッシュフロー表<表4>のように「綱渡り」ではあってもボーナスから貯蓄に回るお金をつくられていることなど、努力が伺えます。
しかし、収入と支出が今のままなら、2007年の住宅購入後から教育費も増え年間収支は赤字となりますので、その埋め合わせに貯蓄を取り崩していかなければなりません。貯蓄を全部食い潰したならば「家計破綻」となりますが、キャッシュフロー表の予測では、貯蓄残高は黒字が維持できそうです。「貯蓄は使うために貯めた」と考えれば、この取り崩しは「異常」な状態ではないと考えられます。

セカンドライフに入る60歳には約1000万円の貯蓄残高となっていますが、高橋家の場合、安心できる金融資産目標としては、退職金+金融資産で2000万円を目安にしたいところです。

2.子供にかかるお金の整理

お子様の進路について、「進路と教育金の予測<表2>」で平均的な数値を使用し整理してみました。
<表3>ご長女は私立高校進学〜私立大学進学がご希望なので、キャッシュフロー表<表4>に入れました。公立高校に比べると私立高校の授業料は家計を圧迫する要素となりますが、キャッシュフロー表からは家計破綻に導かれるほどの不安はないようです。

ご長男の進路に国立大学進学を希望とされていますが、その最大の選択要因が「授業料の安さから」だとすると、ちょっと予想はずれになるかも知れません。なぜなら、 国立大学も経営するという立場に変わってきたからです。

2004年度より国立大学は独立行政法人化されました。今後は、大学によって必要な費用が異なってくる可能性があります。ただ、国が平成15年度の授業料の額を基準として標準額を定めた上で、各大学の授業料を定めることになり、各大学が様々な工夫を凝らして学生に特別の教育サービスを提供したいなどの理由がある場合には、標準額を超えて授業料を定めることも可能となるようで、その場合でも標準額の10%までという上限を定めており、大幅に上がることはなさそうですが・・・(文部科学省HPより引用)

少子化が進む中これからの大学経営は、魅力づくりをして学生を確保することが重要になってきます。それにはコストがかかると考えられ、それが授業料等のアップにつながるおそれがあると予測できるのではないでしょうか。「国立大学の授業料は安いというイメージは、遠い昔」となってしまう日が来るかもしれません。

教育資金を貯蓄の取り崩しにだけに頼っていったならば、貯蓄の枯渇は加速度を増してしまいます。 対策として、子供と話し合い、教育資金は「本人が申請し、奨学金を利用する」を検討していきましょう。 主な奨学金制度とローン制度は以下のようなものがあります。
  1. 日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金制度
  2. 大学等独自の奨学金制度
  3. 自治体の奨学金制度
  4. 企業(財団)の奨学金制度
  5. 新聞奨学金制度
  6. 国民金融公庫の教育ローン
  7. 民間の教育ローン
今後どうなっていくかを今の時点で予測するのは困難ですが、以下のポイントをおさえていくことで、計画にぶれが出てもある程度備えることが出来ると思われます。
  • お子様の目標について夫婦とお子様を交えた話し合いを持ち、学費・教育など動向のチェックをし、計画を見直していく
  • お子様が中学年になったら、進学計画と親の資金計画についてきちんと話し合い、認識を共有すること
3.住宅購入計画

住宅は即金では買えないのが普通です。だから住宅ローンによる資金調達が不可欠となります。 「住宅金利が上がり始めた!」と騒がれていますが、異常に低かった「超低金利」がようやく終わりに近づこうとしているだけのことです。焦ることはありません。まず、家庭において「住宅ローン」の研究が必要となります。銀行やノンバンク、ネット銀行などの金利比較など動向チェックからはじめてみましょう。

<表5>は「住宅取得計画とローン返済」についてまとめたものです。ポイントを押さえておきましょう。
  1. 無理なく返済できる額かどうか
    <表5>は、固定金利25年の4%で計算しました。今の賃貸が年102万円に対して年126万円なので、負担は約月2万円強増えます。買う前と買った後の「家計のケア」は必要です。
    またローンの返済が終わるのは、道夫さんが62歳の時となります。定年制が60歳であれば、これは不安でしょう。ただ60歳時のローン残高が240万円程度なので、それまでの期間での繰り上げ返済か、退職金での一括返済などの方法で残債を完了すれば家計への不安は少なくなります。

  2. 金利の上昇も考えて固定金利で検討する
    06年6月の銀行のチラシをみれば、ローン金利は1.15%や1.3%等となっていて、<表4>でシミュレーションした4%と比べれば相当低い金利となっています。でも、この1%台の低金利で惑わされてはいけません。低いのは2〜3年の固定金利選択型となっています。つまり固定期間の2〜3年後には、その時点での市場金利によって見直されるからです。今後、市場金利が上昇すると予測するのであれば、長期の固定金利で選びたいものです。ちなみに、4%は過去の住宅金利の平均を使いました。07年の購入時にはどのような金利になっているかわかりませんが、とりあえず目安として4%を使いました。

  3. 新規契約で選ぶ住宅ローン
    新規契約での長期固定金利の住宅ローンの代表には、「フラット35」があります。これは、金融機関によって金利差があります。しかしここにきて、各銀行本体のローン商品に力を入れるようになってきました。 フラット35と同水準の金利の商品を比べてみると、例えば06年6月のみずほ銀行では、キャンペーン金利ではありますが、あまり変わらなくなっています。2,3年前まで「公的融資と民間融資では公的融資が有利」という多くの見方があったのですが・・・
    (比較:http://www.flat35.com/document/index.php?module=Financial&action=Result&area=13&pageID=1
    「フラット35」(35年固定)・・・3.06%
    「全期間固定コース20年」・・・2.8%
    ※ ただし、フラット35は団体信用保険料が別途かかり、20年固定商品は借入当初に保証料が必要となるので、比較する際は、その点も考慮してください。
    また金融機関によってはキャンペーンの優遇金利を「同一勤務先に満3年以上勤務されている方」「給与振り込みで利用をされている方」などの条件があるので、注意しておきたい点です。

  4. ボーナスに頼らない
    基本的に返済は月々の給料の範囲内で行い、ボーナスには頼らないこと。しかし、ボーナスはうまく利用したいものです。つまり、「ボーナスは貯めておき、繰上返済にあてる」といった計画をたててください。

  5. 住宅ローン控除はお得?
    住宅ローン控除は、年末のローン残高に対して1%の税額控除が還付される(07年住宅取得だと1〜6年目1%、 7〜10年目0.5%)という制度です。高橋さんの場合、購入年度のローン残高は約2,000万円なので1%を乗じます。すると、約20万円の還付額が計算されます。しかし、高橋さんの所得税を見積もったところ年間10万円前後ですね。それだとその納付額を上限に還付の計算がされるので、20万円ではなく約10万円の還付となります。
4.保障の分析

保険は、大きく分けて死亡リスクと医療リスクを目的に、シンプルに加入するのがわかりやすい加入方法です。

死亡リスクの分析では <表6> から、万が一の場合の収入総額7,363万円に対して支出総額14,217万円なので、不足する資金が7,454万円となります。これを現在加入の保障額+貯蓄額+死亡退職金合計6,531万円と対比してみると、不足する保障額923万円と出ます。今後が不安であれば、この額約1,000万円に相当する生命保険の保障額を増加させておけば安心につながります。もちろん保障の目安は毎年変わっていきますので、一度加入すれば放っておいても大丈夫というものではありません。


5.投資計画

資産運用の基本は「わからない運用は避けて、わかる運用から始める」です。 投資は「知ること」から始めましょう。一朝一夕で理解できることではないので、知識の積み上げは重要になります。

資産運用は2つの方法で
投資は「プロに任す」と「自分で運用する」に分けて考えることが必要です。特に「自分で運用する」については、当初は「理解できる商品を少額から」で運用をはじめ、その経験を積みながら、徐々に運用額を増やしステップアップしていきます。そうすることで「知識」+「経験値」=「知恵」となり、投資に対する選択眼がより広がっていくと思われます。

複利の運用効果とは
1. いくらの運用を考えればいいか
<表4>のキャッシュフロー表では、お子様の最終学歴の卒業は高橋さん57歳(2026年)となり、その貯蓄残高は、約700万円です。そのうちの200万円をいざというときのための貯蓄としてプールすると考えると、700万円−200万円=500万円が運用対象金額となります。
2. 運用期間はどれくらい
56歳−37歳、20年程度の運用期間で考えてみます。
運用の複利効果でどれくらい増額が考えられるか
20年間1%で運用すれば・・・500万円×終価係数 1.22 =610万円(110万円増加)
20年間2%で運用すれば・・・500万円×終価係数 1.486 =743万円(243万円増加)
20年間3%で運用すれば・・・500万円×終価係数 1.806 =903万円(403万円増加)
もちろんこれらの数字は、あくまでも目安です。この通りに運用できる保証はありません。これに近づけるよう、「自分で運用する」の知識を積み上げる努力が必要となるわけです。

プランどおりに実行できるかどうかは、家族の協力があってこそです。教育資金需要とローン返済のバランスをとり、投資とうまく付き合いながらセカンドライフへのソフトランディングを目指してください。





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