家計診断Q&A

家計診断Q&A


転勤先の居住に、社宅か一戸建てかで迷っています。


市田 雅良先生
(いちだ まさよし)
プロフィール
将来のライフプランについてキャッシュフローを分析(住宅ローン・教育資金など)してみる。

住宅にかかる支払総額で検討する。

自己責任として
1.将来購入の際、金利の上昇がどのくらいか
2.単身赴任の二重生活の負担
3.老後資金のための貯蓄計画を持つ


田中美紀さん(仮名)のご相談
転勤で名古屋から仙台に移動が決まりました。

社宅が用意されてはいますが、学校の近くに建築売出中の住宅があり2,300万円(仙台市内160u)の物件ですが夫婦とも気になっています。来年は子供が小学と中学に入学します。仙台の地を最後の住み処にしてもいいと思っていて、思い切って購入する計画を立てていますが、初めての土地にいきなり住宅取得してもいいのかどうか、住宅ローンの返済や子供の教育費用のことなどが心配です。

今後の転勤の可能性はありますが、それは単身赴任で乗り越えられるだろうと話し合っています。

田中美紀さん(仮名)のプロフィール

36歳、主婦。36歳・会社員の夫と12歳、9歳、6歳、4歳のお子様との6人で、現在は賃貸にお住まい。

<家計の状況>
月間収入(税金・社会保険料を除く)
夫(年収880万円) 460,000円
月間支出費用 480,000円
基本生活費 300,000円
住居費(賃貸マンション) 86,000円
教育費 20,000円
生命保険 36,000円
車のローン 38,000円
年間収入(税金・社会保険料を除く)
夫(ボーナス・その他) 1,540,000円
年単位の支出 1,280,000円
夫婦小遣い他 600,000円
帰省・旅行代 200,000円
学資保険料 480,000円
貯蓄の状況
毎月の積立額 ▲20,000円
ボーナスからの預貯金 20,000円

 


環境が変われば家計の内容も変わる
社宅を活用しながら、購入時期を見極め
 
1.現在の家計を見直しして貯蓄できる体質へ!
現在あまり貯蓄が進んでいないとのことですが、お子さま4人分の将来の教育費など、支出の増加にも耐えられるような家計管理をしていく必要があります。その上で一戸建て住宅を購入されても、住宅ローン返済と、生活収支や貯蓄等の配分をどうしていくべきかということが課題ですね。また、ご主人の定年までに老後資金をいくら備えるのかという問題も、そろそろ想定しておく年齢でもあります。
したがって、住宅ローンを組む前に、今後の生活設計を立て、家計の見直しを考えてみるのは大変重要なことです。

◎ 現状の問題点
● 住宅購入と住宅ローンのプランニング
<図1 住宅購入と住宅ローン(2006年購入予定)>
融資額2,300万円は、年収880万円あるので、どの金融機関でも融資可能な範囲でしょう。ローン返済は年間108万円程度となり、現在の家賃負担が少しアップする程度の金額なので想定されていた範囲内でしょう。でも、自己資金が300万円と購入物件の約1割強(目安は2〜3割程度)なので、購入後の家計のやりくりは非常に不安です。

● 住宅購入した後のキャッシュフローは大赤字!
<図2 現状での2006年住宅取得キャッシュフロー>
2006年の住宅取得時は年間収支が190万円の赤字となりますが、6年後の2012年までは若干の黒字が続きます。しかし2019年からは貯蓄を食いつぶして貯蓄残高が赤字となります。その後貯蓄残高が黒字になることはなく家計が破綻してしまいます。

● 4人のお子様の教育費負担を認識
<図3 お子様の教育費・結婚資金>
長男の一郎様が来年中学へ入学し、その後に続くお子様の教育費がどんどん加算されていくと予想されます。教育費以外の支出を加えると長男一郎様が大学へ進まれる頃から「現状住宅取得キャッシュフロー」でも赤字が続き、お子様の教育費対策で学資保険に加入されていても家計が心配されます。

◎ 問題点の解決策
● 家計の見直しをする
<図4 都道府県別消費支出の内訳>
総務省データから見れば、名古屋から仙台へ行かれても生活水準的にはあまり変わりはないようです(東京は名古屋と比較して一割程度負担が増加)。ただ現状で支出が40万円を超えているので、この総務省のデータを参考に月額5.5万円程度支出を減らすことを家族会議で決めて実行してみてください。「転勤をした」「住宅を取得した」など、環境が変われば家計の内容も変わります。このチャンスに家計を引き締めてみてください。

● 「転勤族」の住宅の取得は慎重に、「社宅」をうまく活用する。
厳しいようですが、転勤が宿命となるお仕事をされている方は腰を据えた「住まい方」は転勤が終わるまであきらめた方がいいのではないでしょうか。田中様は住宅を取得してから転勤があっても、単身赴任をしてもいいということでしたが、家族と離れて二重生活では、家計の効率がとても悪いモノです。

また転勤先の仙台では社宅(家賃3万円程度)が用意さているとのことなので、これをうまく利用して可処分所得の増加をはかるのもいいのではないでしょうか。例えば3LDKの民間相場が10万円の家賃でも、社員に3万円で貸す場合は可処分所得が7万円増えることになります。(ただし非課税の家賃補助の条件をクリアする必要があるので会社側と検討が必要)

可処分所得を増やすことができる「社宅」を十分活用する価値はあるのではないでしょうか。それをふまえて転勤しなくてもいい時期になる50代後半は、4人目の優香様の教育費が終わる頃と重なります。「マイホーム」で暮らす希望を実現するのはこの時期を検討されてはいかがでしょうか。
● 住宅ローンの低金利と短期固定か長期固定のポイント
「住宅取得は、低金利の今しかない」といった広告宣伝があふれています。でも焦る必要はないと思います。

06年7月にゼロ金利解除で金利の急激な上昇があるように騒がれていました(低金利が続いたのは異常ととらえるべきで、金利上昇はこれから正常(4%程度を想定)に戻ると考えたいところです)。しかし大手銀行をはじめ各金融機関は、住宅ローンの金利を現状の金利状況から06年9月以降0.1%程度の引き下げをしました。上がるのか下がるのかどうなっているのか不安です。

これは、ゼロ金利解除後の長期金利が予想に反し低下したことによるもので、引き下げは一時的との見方が強いようです。中長期的には緩やかに上昇する流れは変わらず、急激な金利上昇、短期での急上昇はないと考えたいところです。それは、アメリカの景気や国内の状況などから、大幅な金利上昇とはいかず、緩やかな上昇傾向は続くという見方が大勢を占めているからです。

金利の簡単な見分け方を一つ紹介すると、金利トレンドを見て、短期固定と長期固定の金利差以上に金利水準が上昇するというポイントを見ます。これは短期固定より長期固定の方が有利という見方ができます。
大幅な金利上昇があったとしても、融資額を分散し短期と長期を組み合わせるとか、繰り上げ返済の計画を考えるなどの対応策が必要となります。

金利が上昇傾向だから「長期固定」と単純に考えないようにすべきで、長期固定を選択するにしても、金利の見積もりをとってケースバイケースで検討したいものです。多少の金利負担増は保険料代わりと割り切れる考え方も必要なのではないでしょうか。
● 「家計引き締め」+「社宅」でマイホームの自己資金作り
<図5 改善策(基本生活費見直し&2026年住宅取得)キャッシュフロー>

仮に、今から基本生活費年間341万円から286万円に見直し、住宅取得価額2,300万円を2026年と仮定してキャッシュフロー表を作成すれば、貯蓄残高は黒字が維持できると予想されます。

「住宅取得価を2026年」と仮定したその理由
第四子の大学卒業で無事に子供の教育関連支出が終わるタイミングに合わることができること。
リタイア後を自宅で過ごすには56歳頃に住宅取得するのがベストな時期と考えられます。(ただし、今後の転勤をしなくて済む時期であることが条件となります)
2026年の住宅事情がどうなっているかは予測できませんが、仮に住宅価格を2,300万円として計画しておきます。
その時期に2,300万円の貯蓄がうまく貯まればいいのですが、図表5のキャッシュフローの予測では約2,000万円が自己資金が充てられそうです。物件取得の不足額である約600万円は住宅ローンを組むことになります。
まもなく退職して退職金が出れば、2030年に残っている住宅ローンの残債約400万円を返済します。<図6 住宅購入計画と住宅ローン(2026年購入予定)>では、2035年までのローン返済表となっていますが、途中の2030年に退職金で残債を返します。60歳でローン返済を終えるのは、年金生活に住宅ローン返済を引っ張らないためです。

ただ、60歳の退職時に退職金でローン残債を返済する予定とします。それでも60歳以降の貯蓄残高は黒字が維持できると予想されます。一つの参考の目安としてください。

仙台が「最後の住み処」を希望されている田中様。今後の転勤で紆余曲折を乗り越えて、うまく仙台に戻れることをお祈りしています。




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