家計診断Q&A

家計診断Q&A
今回のご相談テーマ
 

妻名義のローン返済を夫が肩代わりできるでしょうか?

 
今回、回答いただく先生は

市田 雅良先生
(いちだ まさよし)
プロフィール
アドバイスのポイント
  • 現状分析と家計の把握
  • ローン返済とその肩代わりの問題
  • 保障の見直しは必要か

飯田 博さん(仮名)のご相談

昨年、結婚と同時にマンションを購入したのですが、夫に事情があり妻の名義で単独ローンを組み購入しました。 でも貯金が少なく、出産で妻が退職すれば収入が減り、家計破綻になることが心配です。何より妻名義になっているローン返済をどうすればいいか悩んでいます。

現在、必要な時だけレンタカーを借りて実家に帰っています。できれば子供は二人欲しいと考えているので、マイカーがあればと思うのですが、出産育児、住宅ローンが優先なので、家計が苦しくなるようなら車はあきらめてもいいと考えています。

それから夫の職種(IT関連)は、収入に不安定な面がある他、退職金も期待できないと聞かされ、夫の定年時の60歳に1000万円程度は貯蓄しておきたいと思い、投資信託を始めたばかりです。 不安ばかりが先にたちますが、どのように考えていけばいいのかアドバイスをお願いいたします。

飯田 博さんのプロフィール

家族構成
飯田 博 昭和52年11月28日生 30歳 会社員 世帯主
飯田 明子 昭和46年10月4日生 36歳 会社員 配偶者
飯田 第一子 平成20年12月31日生 予定 第一子 世帯主の扶養
飯田 第二子 平成23年8月8日生 予定 第二子 世帯主の扶養

 

■家計の状況
《現在の所得と収支状況》
<夫の年間収入>
給与収入 477万円
その他収入 ※下記明細 0万円
社会保険料・税 81万円
夫 可処分所得 396万円
<妻の年間収入>  
給与収入 346万円
その他収入 ※下記明細 0万円
社会保険料・税 61万円
妻 可処分所得 285万円
可処分所得 合計 681万円

<年間支出の部>
日常の生活費 240万円
教育費 0万円
住宅費 94万円
生・損保保険料 27万円
貯蓄額(ファンド積立2.5万円含む) 270万円
その他費用 50万円
使途不明金
(日常の生活費は、 食費・光熱水道費・被服費・通信費交通費・ 医療費・家事用品・交際費・こづかい等)
0万円
支出合計 681万円

■ローン返済計画
住宅ローン 奨学金
借入残高 1600万円 借入残高 180万円
返済方法 元利均等 返済方法 元利均等
返済残期間 34年間 返済残期間 10年間
返済期間 2040年まで 返済期間 2016年まで
1年目〜 2.98% 1年目〜 2.233%
年間返済額 75万円 年間返済額 20万円


現状のキャッシュフロー表

ライフプラン設計は、ご夫婦のコミュニケーションが大事となります。お互い相手をどのように思っているのか、博さんと明子さんに今の希望、要望などを箇条書きにしてもらいました。

  • 妻から夫への希望、要望
  1. 子供の出産と育児期間に、5年間ほど仕事を休職したい。
  2. 妻名義の住宅ローンは、出来れば夫名義に書換えて欲しい。
  3. 夫は深夜帰宅で日曜日も家で仕事をしているので、生活と仕事のオンとオフを使い分けて欲しい。
  • 夫から妻への希望、要望
  1. 子供は2人は欲しい
  2. 仕事は大変だが、職場の人間関係はうまくいっているし、何より楽しくやりがいがある。
  3. 今後のマネープランの優先順位は、1.子育て 2.住宅ローン返済 3.車で、1と2を特に優先的に考えている。
  4. 60歳の時にはローンを完済し、なおかつ貯蓄目標1000万円を目指したい。

貯蓄残高1000万円を意識したライフプラン

☆飯田家の現状と家計の特徴

1. 名義人と住宅ローン返済の関連性。贈与税に気をつけて!

金融機関の住宅ローンの名義人は妻の明子さんですから、妻が出産により仕事を休職又は退職した場合には、妻は収入からローンが払えなくなります。でも、妻の支払い義務がなくなるわけではありません。そのため、以後の返済は夫が肩代わりするという流れになりますが、これは贈与税を課される可能性があります。つまり、不動産の名義人である妻の返済を夫が返済するということは、夫から妻への贈与とみなされる可能性が出てきます。夫婦間における生活費の資金移動と考え、無意識に肩代わりしているケースが多いようですが、厳密には課税対象となるので注意が必要です。

○ 贈与税の問題
そこで、妻名義のローン返済を夫が払う場合の問題点の対策として、以下が考えられます。

  1. 贈与税をきちんと払う方法 
  2. 名義を夫の名義に変更する方法、(譲渡所得となりますが、購入して間がないので、所得は出ないか、出ても大きな額ではないと思われます。専門家の税理士等などにご相談ください)
  3. 住宅ローンそのものを妻から夫へ借替るという方法。これは、夫の返済余力が十分にあり、かつ金融機関の承諾が必要になります。

以上の方法が考えられます。検証してみましょう。
1.の贈与税納付は、家計に余裕がなく大変なことになります。でも、贈与税には「基礎控除110万円」というのがあります。飯田さんの場合をこの贈与税計算に当てはめてみると、年間ローン返済が75万円なので基礎控除の範囲内となり、納付税額は発生しません。

ただし、明子さんがこの後職場に復帰せず専業主婦になった場合には、「毎年75万円贈与する」と約束したことになり、年間110万円控除以内だとしても「連年贈与契約」とみなされ、その時点で「全体の金額(この場合融資残額)」を受取る権利を受けたとみなされますので注意が必要です。

ちなみに1.の方法の場合は、繰り上げ返済のために妻が支出した金額は妻から夫の贈与又は貸付になりますので、簡単なものでよいですから贈与又は貸付の書類を作成しておいてください。

2.と3.は、返済人と名義人が同じとなる点ではスッキリします。でも、ともに税金面ではあまり気にしなくてもいいところですが登記手数料がかかるので、資金的余裕のない時期としてはあまりお勧めではありません。(専門家の税理士等などにご相談してみてください)

○ 妻の「住宅ローン控除」の適用は、妻から夫への付け替えは不可
妻から夫が持分を取得、つまり夫が妻の名義持分を売買で取得したということになる場合の「住宅ローン控除」の適用の付け替えも可能かという点についてですが、住宅ローン控除の適用要件で「住宅について生計を一にする配偶者などの特別な関係にある人から取得したものでないこと」となっています。つまり、夫が妻から買った住宅の持分は、生計を一にする配偶者から買ったものに該当します。したがって、夫が妻から持分を買ってそのローンを背負ったとしても、その分の住宅ローン控除は適用できないのです。
ただし、住宅購入時より妻が会社を辞める予定であった場合には、ローン残高全体に対して贈与とみなされ、贈与税が生じる可能性もあります。

もっとも、明子さんが申請していた「ローン控除」については、給与収入にかかる所得税が無くなればローン控除は使えなくなります。つまり、所得税納付額がない為、還付額が発生しないということです。

2.生活費と貯蓄のバランスと問題点とその解決

○ 問題点の整理

<現状のキャッシュフロー表>1.では、明子さんが産休に入る2008年〜2018年を予定にいれると、その間は年間収支が赤字になり、貯蓄の取り崩しで底を付くと予想されます。働き出されても子どもの教育資金がかさみ、2033年には貯蓄残高が赤字となり家計破綻となることが予想されます。とても希望される60歳時1000万円の貯蓄はできないことになります。

飯田家の今のライフスタイルは「DINKS(ディンクス:ダブル・インカム・ノー・キッズ)」と呼ばれていて、子どもがいない分それなりに収入があり、それなりに消費生活を楽しむスタイルといわれています。でも、飯田家は次のステップで子供を持ちファミリーを形成していくことを希望されています。共働きファミリーでは、皆の責任が増すことにより今までとは違った消費支出が出てくるので、生活費と貯蓄のバランスをうまく取っていくことが必要になります。今後のライフイベントを予想し、うまくクリアしていきたいものです。

○ 解決への道

ライフプランを考える上でポイントが3つあります。

これから述べる飯田さんのライフプランを変更するポイントは、あくまでも数字上の定量的分析から解決策を述べるもので、心の問題である定性的分析を十分吟味した結果ではないことをご了解ください。

○ 解決策1
子どもは2人希望ではなく1人希望に変更できますか? 2人では家計破綻が懸念されます。
○解決策2
車は現在のように必要なときにレンタカーを借りるというのを続けるか、維持費が少ない軽自動車に抑えておくことなどをご検討ください。

解決策を実行した場合の効果として、60歳時の貯蓄残高が1000万円を超える予測が出来ます。また車関連費用は0としました。それから、第一子の子育てに5年間の休職は必要と考えました。生まれて間もない内の親子のスキンシップは、その子の人生に大きな影響を与えるといわれています。休職復帰後の収入予測は3割程度落ちるものとして入力しました。その後はご夫婦二人で力を合わせて、自分たちの幸せ、家族の幸せに向かってライフプランを充実させてください。

3. 保障額の検討

収 入 支 出 差し引き不足額
遺族年金  1,357万円 基本生活費   8,568万円    
妻の収入  4,248万円 住宅関連費   969万円 不足額 1.−2. 2,188万円
公的年金  2,877万円 子供関連費    葬儀費用等 600万円
個人年金    --- その他費用   1,133万円    
合 計1.  8,482万円 合 計2.   10,670万円 不足額合計  2,788万円

    ご加入の生命保険(ご夫婦分)    
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
加入保険会社   TKA生命 SO生命 AIU生命 SEC損保 ZR共済 ZR共済
被保険者   明子 明子
契約.者   明子 明子
契約目   H18.7.1 H18.7.1 H18.6.1 H18.6.1 H16.12.29 H16.12.30
契約年齢   28歳 28歳 28歳 28歳 23歳 33歳
満期・満了年齢   60歳 60歳 38歳 終身 58歳 43歳
更新期間   なし なし なし なし なし 10年
入院特約期間         終身   43歳
保険種類 定期保険 変額終身 医療保険 がん保険 終身共済 医療共済
死亡保険金 定期保険   300万円       10万円 
             
年金 15万円          
養老保険            
終身保険         300万円  
合計保険金 15万円 300万円     300万円 10万円 
満期保険              
個人年金              
医療/日/災害入院       3,000円     5,000円
医療/日/病気人院             5,000円
医療/日/ガン入院         10,000円    
医療/ガン/一時金         50万円    
払込方法 月払 月払 月払 月払 月払 月払
 払込期間 28歳〜58歳 28歳〜60歳 28歳〜38歳 28歳〜39歳 28歳〜58歳 33歳〜43歳
保険料 4,635円 4,323円 2,210円 1,390円 6,615円 1,556円

一般的に見れば、お互いに死亡保険加入の保障は少ないといえます。そこで表のように万が一の差し引き不足額を計算してみると、2,788万円となります。実際にそれほど不足するのかといえば、共働きなので、残された配偶者は働いて何とか暮らしていけるので、この不足額に見合う保障に入らなければならないということはないと思いますが・・・、今見直す必要はないと考えられますがどうでしょうか。

ただし、家族が増えれば責任が増えます。今の死亡保障では責任が果たせるものではありません。かといって、どのような保険に加入すればいいのかというアドバイスについてですが、今すぐ実行されるべき対策ではなく、家族が増えたとき(3人家族?4人家族?)に考えればいいと思われます。保障額の対策は、子供が誕生し収支バランスが取れるまで見直しは「お預け」にしてもいいのではないでしょうか。

4. まとめ

飯田さんは、ローンの返済方法で誰が払うのかという問題に直面されていますが、贈与にならないように筋道を立てて問題を切り抜けてみてください。そんなに難しいことではないと思いますよ。

また、キャッシュフローの数字から問題点を見てアドバイスしていますが、それはあくまでも数字の問題だけです。飯田家のバランスのいいライフプランのためには、数字から見るだけではなく、気持ちの問題を組み入れることも重要です。今回のアドバイスを参考に、ご夫婦でじっくり将来のライフプランを話し合ってみてください。

 

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