家計診断Q&A

家計診断Q&A
今回のご相談テーマ
 

住宅ローンを繰り上げ返済し、完済しました
ローンの返済にあてていた分を今後どのように運用したら?

 
今回、回答いただく先生は

臼井 悦子先生
(うすい えつこ)
プロフィール
アドバイスのポイント
  • 退職後の生活を具体的にイメージし、必要な金額を見積もる
  • 奥様の働き方は、貯蓄額を試算して検討
  • 複数の資産に分散投資しリスクを低くする

大森優子さん(仮名)のご相談

1997年に借りた住宅ローンを完済しました。今までローン返済にあてていた月約12万円と繰り上げ返済用に貯めていた月10万円、合わせて約22万円を今後どのように貯めていくべきか、運用すべきかと考えております。他にローンはありません。

私は派遣社員ですので、ずっと働き続けられるかというと不安です。現状況では、働くつもりであれば50歳過ぎても働いていられるような環境にはありますが・・・。

資産は、一般財形50万円、投資信託130万円、普通預金30万円、合計210万円という状況です。

子供もおりませんので教育資金はかかりませんが、何よりも老後が心配です。

大森さんのプロフィール

41歳、派遣社員。44歳、会社員の夫と2人暮らし。
世帯年収:900万円
住居: 持ち家(ローン完済)

毎月の収支   ボーナス(年間)の収支
税引き後収入(単位:円)
340,000
200,000
合計 540,000
支出(単位:円)
食費 58,000
教養娯楽費 45,000
交際費 5,000
水道光熱費 17,000
通信費・交通費 13,000
こづかい 100,000
その他 20,000
保険料 24,285
合計 282,285
貯蓄(単位:円)
財形 10,000
合計 10,000
 
税引き後収入(単位:円)
1,440,000
0
合計 1,440,000
支出(単位:円)
固定資産税 110,000
車保険 57,000
旅行 500,000
合計 667,000
貯蓄(単位:円)
財形 50,000
合計 50,000
 
貯蓄・金融資産 残高(単位:円)
日本株投信 1,300,000
財形貯蓄 500,000
普通預金 300,000
合計 2,100,000

老後にそれほど不安を感じなくても大丈夫
返済にまわしていた分は複数の資産に積み立てていきましょう

大森家のリタイア後に必要な資金は2,500万円

おふたりで頑張って住宅ローンを完済された大森さん。ローン返済がなくなってホッとしたところで、余裕資金の運用について戸惑われているようですね。老後がご心配とのこと。大森家の老後費用はどのくらい必要かを具体的にみていきましょう。

まず、家計の支出。リタイア後にかかる生活費は、現役時代より減るのがふつうです。生命保険料やレジャー費などは減少し、お子様がいる世帯なら、子どもの教育費や生活費負担がなくなります。大森家の場合、こづかいや保険料が減少すると考えて、毎月の生活費は現在の8割程度の22万円程度になると仮定します。毎月の生活費とは別に、国内・海外旅行を毎年1回ずつ、固定資産税等に、現状と同じく年間約60万円を支出すると考えます。また、自宅のリフォームなど住まいをメンテナンスする費用として10年ごとに200万円程度かかるとします。

では、収入はどの程度見込めるでしょうか。仕事をリタイアしてからは、主な収入は年金に頼ることになります。会社員なら、男性は昭和36年4月2日以降生まれ、女性は昭和41年4月2日以降生まれの人は、65歳から公的年金を受け取れます。大森さんはご夫婦とも65歳から受け取ることになりますね。

定年が60歳だと年金を受け取り始める65歳までの5年間は収入が見込めません。そのため、平成18年4月から改正高年齢者雇用安定法により、企業には、従業員が公的年金を受け取り始める年齢まで雇用することが義務付けられています(労使協定等で定めた基準に達していないと再雇用されない場合もあります)。現状では、60歳でいったん退職、退職金があれば受け取り、その後新たに雇用契約を結び、以降の収入は退職時の半分程度になることが多いようです。

65歳になると、自営業や専業主婦なら老齢基礎年金を、会社員なら加えて老齢厚生年金を受け取ります。大森家の場合、ご主人は65歳から老齢基礎年金・老齢厚生年金を受け取り、加えて、奥様が65歳になりご自身の年金を受け取り始めるまでは年額39万6千円の加給年金を受け取れます。奥様は、厚生年金保険に加入していた期間があれば老齢基礎年金・老齢厚生年金が受け取れます。年金額は、それまでの給与や加入期間などにより変わってきますので、大森さんが実際に受け取る年金額をここで算出することはできません。社会保険庁のホームページ(http://www.sia.go.jp/)で年金額を試算できますので、ご自分でシミュレーションしてみることをお勧めします。

ここでは、大森家の状況を参考に、さらに幾つか条件を仮定して、定年退職からご主人が85歳までにかかる支出入を計算してみました(図表1)。生活費不足分や、レジャー費・住居メンテナンス費を合計すると、2,300万〜2,500万円程度をご主人が60歳になるまでに準備すればよい、ということになります。これはあくまで目安ですので、これを参考にご自分で加減してみてください。

(図表1)準備したい老後資金(モデル例)

設定条件:

夫は会社員。厚生年金保険に37年加入、平均給与35万円。昭和38年生まれ。
妻は専業主婦。国民年金に37年加入。昭和41年生まれ。
毎月の生活費は22万円(現役時代の8割)、他にレジャー費等に年60万円出費。
住居メンテナンス費として10年毎に200万円を出費と仮定。年金額は平成19年度価格。

夫の年齢 見込める収入等 準備したい金額
生活費 レジャー費 住居メンテナンス費
60歳〜64歳まで 夫は退職後、再雇用され働く。
月収は現在の半分程度の17万円、ボーナスなしと仮定。
300万円
(年不足分60万円×5年間)
1,500万円
(60万円×25年間)
400万〜600万円
65歳〜67歳まで 受け取る公的年金は、およそ230万円。

(夫:老齢厚生年金と老齢基礎年金の合計約190万円、加給年金約40万円)
102万円
(年不足分34万円×3年間)
68歳〜85歳まで 受け取る公的年金は、およそ263万円。

(夫:老齢厚生年金と老齢基礎年金の合計約190万円、妻:老齢基礎年金約73万円)
不足ナシ
準備したい金額合計 2,300万〜2,500万円

3%で運用し続けられれば、毎月9万円の積み立てで老後資金は準備できる

老後資金はおよそ2,500万円程度必要なことが分かりました。必要な資金を貯め、そして10年、20年などの長い期間をかけて取り崩していく場合は、年利何パーセントで運用するのかで、その金額は大きく変わってきます。たとえば、毎年100万円ずつ貯蓄したとします。年1%の1年複利で運用すると10年後には1,046万円になります。ところが、年3%で運用すると1,146万円、年5%なら1,258万円にもなります。複利の効果で、増えた分は元本に加えられてさらに大きく増えていくのです。

大森さんが必要な資金を複利で運用しながら取り崩していくとすると、60歳までにいくら準備すればいいかを試算したのが(図表2)です。運用しなければ約2,500万円必要ですが、年利1%では約2,300万円、3%なら約1,900万円、5%なら約1,600万円あればいいことがわかります。さらに、この金額を準備するためには、今から毎月いくらずつ積み立てていけばいいかも同じく図表2でわかります。2つのパターンを考えています。奥様が働き続け、ご主人が退職するまでコンスタントに積み立てていく場合を a)としています。年利1%では12万円、3%なら9万円、5%なら6万円を毎月積み立てていけばよい計算です。もうひとつは b)奥様が50歳で退職する場合。奥様が退職する9年後までは積み立てをしますが、それ以降は積み立てないと仮定しています。年利1%では19万円、3%なら13万円、5%なら9万円を毎月積み立てていくことが必要です。いずれにしろ、大森さんが毎月住宅ローンの返済や繰上返済用に充てていた毎月22万円があれば十分なようです。しかし、これはあくまでも試算です。実際は、年利はずっと同じではなく上がり下がりするものですし、税金も考慮しなくてはなりません。あくまで参考としてご覧ください。

高い年利を実現するには株式などの投資性商品を上手に取り入れることが必要です。投資性商品には大きな値上がりが期待できますが、値下がりのリスクもあります。そのことを念頭に置いた上で、大森さんはどの程度リスクを取れるのかを考えながら、奥様が仕事をいつまで続けるべきかを検討されてはいかがでしょうか。

(図表2)60歳までに準備したい金額(概算)

複利で運用しながら取り崩していった場合、60歳までにいくら必要?(万円)

  年利
1% 2% 3% 4% 5%
60歳〜64歳までの生活費不足分 300万円
=年60万円×5年
294 288 283 278 273
65歳〜67歳までの生活費不足分 102万円
=年34万円×3年
96 91 85 81 76
レジャー費 1,500万円
=年60万円×25年
1,335 1,195 1,076 975 888
住居費 600万円
=10年毎に200万円
545 499 460 426 398
60歳までに
準備したい金額合計
2,270 2,073 1,904 1,760 1,635
今から毎月いくら積み立てればいい?
a) 奥様が働き続ける場合:
60歳までの毎月の積み立て金額
12 10 9 7 6
b) 奥様が50歳で退職する場合:
今から9年間の毎月の積み立て金額
19 15 13 11 9

なお、大学を卒業してから定年まで勤めた場合、受け取る退職金の平均額は2,400万円(労務行政研究所「退職金・年金事情」2005年版)です。しかし、ここでは退職金を当てにせず、60歳までに毎月コツコツ積み立てて準備すると考えました。

投資信託を利用して海外にも投資する

病気や事故・災害などに備えるために、生活費の3ヶ月分程度をすぐに現金化できる資産で持つことをお勧めします。大森家の場合、90万〜100万円程度を生活予備費として確保するのが望ましいのですが、(図3)にある通り、すぐに現金化できるのは普通預金の30万円のみです。あと60万〜70万円程度を証券会社のMMFなどで準備されてはいかがでしょうか。証券会社で購入できるMMFは、投資信託の一種で元本保証はありませんが、比較的安全性の高い商品と言われています。銀行の普通預金よりは高めの利回りが期待できます。

(図3)大森家の資産の内訳

老後のための資金は、定年まで引き出す必要はないので、投資性商品に少しずつ積み立てていけば値下がりリスクを低くできます。大森さんの資産は日本株に偏っているようです。このままでは、日本株が好調なときはいいのですが、値下がりする時は大森さんの資産も目減りしてしまいます資産全体の値動きを安定させるには、株式と債券、さらに日本だけでなく海外に投資するものを組み合わせるのがよい、と言われています

米国、欧州の株式や債券を対象にした投資信託などを毎月一定額ずつ購入されてはいかがでしょう。成長著しい新興国の株式は大きく増える可能性もありますが、値動きが大きいので、加えるなら全体の5%程度までを目安にします。

海外に投資する商品は、為替が動くと値段が変わります。毎月一定額を購入し続ければ、値段が高い時は少なく、低い時は多く購入することになり、平均購入単価を下げることが期待できます自動積み立ての手続きを最初にしておけば手間がかかりません

大森さんの場合、資金の全てを老後に回す必要はなさそうです。賢く貯めながら、現在の楽しみにも上手にお金を使うことができればいいですね。

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