家計診断Q&A

家計診断Q&A
今回のご相談テーマ
 

養育費を見込んで、子どもの進路を決めても大丈夫でしょうか
将来のことが心配で、なかなかお金が使えません

 
今回、回答いただく先生は

臼井 悦子先生
(うすい えつこ)
プロフィール
アドバイスのポイント
  • 養育費がなくなった場合も考えた進路の選択を
  • 貯蓄は、将来の目的ごとにわけて管理する
  • 万一に備えて、死亡保障の保険に加入する

宮本 由利さん(仮名 41歳 会社員)のご相談

小学4年生の子どもをもつシングルマザーです。半年ほど前に離婚しました。離婚する前は、子どもを私立中学に進学させようと考えていました。けれど、離婚したいま、それは無理なことなのでしょうか。

これまで、元夫は約束通り養育費を払ってくれていますが、自営業ということもあり、景気が悪くなってもずっと払ってくれるのか心配です。養育費がなくなると、私の収入だけでは、子どもを私立に進ませるのは難しいのではないかと感じています。子どもは地元の公立中学に行くと言っていますが、やっぱり私立に行きたいと言い出した場合、行かせてやれるのでしょうか、それとも無理なのでしょうか。また、いつか養育費を受け取れなくなるかもしれないと思うと、なかなかお金を使えません。どのくらい残しておけばいいのでしょうか。生命保険には加入していません。アドバイスをお願いします。

年齢 : 41歳
性別 : 女性
職業 : 会社員
手取年収 : 450万円、養育費96万円/年
家族構成 : 長男10歳の2人暮らし
住居 : 持ち家(住宅ローンなし)

●毎月の収支
税引き後収入
給与 300,000円
養育費 80,000円
合計 380,000円
支出
費目 金額
食費 50,000円
住居費 18,000円
教養娯楽費 5,000円
交際費 5,000円
水道光熱費 15,000円
通信費・交通費 15,000円
教育費 25,000円
こづかい 40,000円
その他 30,000円
保険料 10,000円
合計 213,000円
貯蓄
金融商品名 金額
普通預金 167,000円
●ボーナス(年間)収支
税引き後収入
賞与 900,000円
支出
費目 金額
旅行 50,000円
被服費 60,000円
合計 110,000円
貯蓄
金融商品名 金額
普通預金 790,000円
●貯蓄・金融資産 残高(円)
金融商品名 金額
普通預金 10,000,000円

養育費の支払いがなくなると家計は赤字ギリギリに
ご自身の収入で支えられる進路を選ぶ方がいいでしょう

1.高校までは、家計が赤字にならないよう進路の選択をする

半年前に離婚された宮本さん。ご自身に安定した収入があるのはなによりです。養育費はいまのところ、きちんと支払われているようですが、これからのことが心配、とのこと。実際、調停をして養育費の取り決めをしても、支払われなくなるケースはかなりあるようです。そんなときは、家庭裁判所から養育費を支払うよう履行勧告してもらったり、弁護士や司法書士に依頼して強制執行という手段をとったりすることができます。けれど、元夫に収入や財産がなければ支払ってもらうのは難しいものです。養育費が支払われるかどうかは、相手次第、という部分があるのは否めません。

お子様が私立中学に進学すると教育費の負担が重くなり、それは大学卒業まで続きます。宮本さんの場合、養育費が受け取れるかどうかで、家計への負担感はかなり違うはず。そこで、将来どうなるか条件を仮定して、宮本さんの貯蓄残高を試算してみました。具体的には、(1)今後、お子様が大学を卒業するまで養育費をいくら受け取れるか、(2)お子様の中学・高校・大学(理系)の進学コース、この2つを組み合わせて、宮本さんの85歳時点での貯蓄残高がいくらになるか試算した結果を下の表にまとめています。

(宮本さん85歳での貯蓄残高)

お子様の進学コース
(中学・高校・大学)
養育費
全額(8万円)
養育費
半額(4万円)
養育費
なし(ゼロ)
全て公立(公・公・公) 1,304万円 702万円 99万円
高校まで公立(公・公・私) 870万円 267万円 −335万円
中学は公立 (公・私・私) 671万円 69万円 −534万円
全て私立(私・私・私) 396万円 −206万円 −809万円

進学コースや養育費により、貯蓄額が大きく変わってくるのがお分かりいただけると思います。85歳での貯蓄額をみると、養育費をまったく受け取れない場合は、全て公立コース以外は、マイナスになってしまいます。養育費を半額、毎月4万円受け取れれば、全て私立コース以外は貯蓄額はプラスとなります。

けれど、これだけではまだ判断できません。お子様が大学を卒業するまでの間、家計が赤字にならないかどうかをみてみましょう。赤字、つまり、収入より支出が多い期間が続くと、貯蓄は減ってしまい、老後資金を思うように貯められません。ですから、高校までは家計のなかでやりくりし、大学では教育資金用の貯蓄と毎月の家計で賄うのが基本です。では、全て私立に進学したケースで、養育費を半額受け取った場合、全く受け取れなかった場合、それぞれの家計収支をみてみましょう。

(お子様が大学を卒業するまでの家計収支 〜全て私立進学の場合〜)

養育費がない場合、中学・高校在学中はギリギリ赤字にならない程度です。支出が少しでも増えるとマイナスになってしまうでしょう。繰り返しになりますが、この時期、教育費を捻出するため貯蓄を取り崩すことは、老後資金を減らしてしまうため、お勧めできません。ですから、養育費を受け取れるかどうかがご心配なら、ご自身の収入の範囲内で支えられる進路を選ぶことをお勧めします。ちなみに、下の表は、すべて公立に進学した場合の家計収支です。参考になさってください。

(お子様が大学を卒業するまでの家計収支 〜全て公立進学の場合〜)


 

(貯蓄高・家計収支算出の前提条件)

2008年の家計状況を基本に、今後かかると見込まれる費用を加えて試算。物価上昇率は2%と仮定。

収入

上昇率は0.5%。60歳で退職、退職金はなし。60歳から65歳までは、契約社員として働き、その他公的手当との合計で60歳時収入の約7割を受け取る。65歳以降は、年金160万円を受け取る。養育費はお子様が大学を卒業するまで96万円。

教育費

自宅通学。年間教育費は(表A)の通り。

一時的な費用

電化製品や家具の買い換え、修理などに年間20万円。2014年から5年ごとに自宅リフォーム費用50万円を計上。

貯蓄残高の
運用利率
都市銀行の普通預金金利 0.12%を適用。

●年間教育費(表A)

  中学 高校 大学(理科系)
初年度 2年〜4年まで
公立 47万円 52万円 113万円 65万円
私立 127万円 105万円 191万円 144万円

中学・高校

授業料、PTA費、塾等の学校外活動費が対象
文部科学省「平成18年度 子どもの学習費調査」

大学

受験費用、大学納付金、通学費が対象
独立行政法人 学生支援機構「平成18年度 学生生活調査」
文部科学省「私立大学等の平成19年度入学者に係る学生納付金等調査結果」
東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査 2007年度」

2.目的別に貯蓄を管理する

宮本さんは貯蓄1,000万円をすべて普通預金に預けておられます。この中には、将来の大学資金のほか、万一のときの生活予備費などがすべて含まれています。そのため、どのくらい残しておけばいいのか、いくら使ったらいいのかが分からなくなっているのです。そこで、将来使う予定のあるお金は、あらかじめ取り分けて貯蓄しておくことをお勧めします。たとえば、お子様が18歳になったときに使う大学資金なら、家計で賄えない分の400万円程度をふだん使うのとは別の口座に確保しておけば安心です。預け先としては、元本が保証されている定期預金や個人向け国債(5年固定)などがいいでしょう。ほかに、生活予備費として生活費の半年分程度などを別の口座に振り分けてはいかがでしょうか。下の表を参考にしてください。

●目的別貯蓄 〜どこにいくら預けるか〜

目的 費用の目安 預け先の例 預入額
大学資金 養育費なし、私立理系進学の場合 銀行の定期預金
個人向け国債(5年固定)
400万円
老後資金 銀行の定期預金 350万円
生活予備費 半年分の生活費 銀行の定期預金
ゆうちょ銀行の定額貯金
証券会社のMMF

150万円

一時的な出費用 家電製品の買換えなど 給与振込口座を
総合口座にし
一時的な出費用は定期預金
手元資金は普通預金
50万円
手元の資金 50万円
合計 1,000万円

なお、いまは低金利が続いていますから、金利を長期間固定することは避け、定期預金なら1年ものを自動継続扱いにするなどして、金利上昇のタイミングをつかむようにすることをお勧めします。少しでも有利な商品を利用するにはネット銀行を利用するのもいいでしょう。セキュリティが心配なら、パスワードに乱数表を使う銀行や、専用の小型の機械に使い捨てパスワードが表示される「ワンタイムパスワード」が使える銀行を候補にするといいでしょう。万一、口座から不正に引き出されるなどの被害にあった場合は、被害発生から30日以内の連絡、預金者に過失がないことなどを条件として、銀行側が被害額全額を補償してくれます。パスワードを定期的に変更する、最低1ヶ月に1回は口座残高を確認するなどして自己防衛も怠らないようにしましょう。

毎月やボーナス時の貯蓄は、一定額を自動的に積み立てるようにしておくと手間がかからず、確実に貯蓄が増えます。リフォーム費用として毎月1万円程度を給与振込口座で自動積み立てにすると、5年後には60万円が貯まっているので、ここから引き出して使います。その後も引き続き1万円ずつ貯めていけば次回のリフォームに充てられます。

勤務先に財形貯蓄制度があれば、老後資金として、毎月の給与やボーナスから一定額を給与天引きして一般財形貯蓄や財形年金貯蓄に預けるといいでしょう。一般財形貯蓄は使用目的に制限はありません。財形年金貯蓄は年金として受け取ることを目的にしたもので、元本550万円(保険型では元本385万円)までは利子が非課税になります。5年以上積み立て、契約時に定めた60歳以降の年齢から最低5年以上の期間、年金として受け取れます。また、元本保証はありませんが、株式や債券で運用する投資信託を候補に加えると、長期で殖やす楽しみができます。自動的に毎月一定額を購入できるものもあるので、毎月1万円ずつなど無理のない範囲で投資できます。

いまは新しい金融商品が次々に販売されており、どの商品にもメリット・デメリットがあります。自分に合ったものを選ぶためにも、大切なお金を守るためにも、「どんなものがあるのかな」と興味を持つことも大切ですね。

3.死亡保障2,000万〜3,000万円程度の定期保険に加入する

保険に加入していない宮本さん。死亡保障の保険や入院した時などに給付金が支払われる医療保険に加入して備えましょう。お子様が大学を卒業される頃までを目安に、保険期間10年、死亡保障額2,000万円〜3,000万円程度の定期保険に加入することをお勧めします。医療保険は、医療費以外の雑費がかかることも考えて、入院1日あたり1万円、終身保障のタイプがいいでしょう。

インターネットでどんな保険があるか調べて、気に入ったものがあれば資料を取り寄せ、申込書を郵送すれば手続きできます。なかには、インターネットで申し込み手続きまでできるネット専用保険もあります。保険料なども試算できますから、しっかり比較しましょう。

将来の不安はいろいろおありでしょうが、貯蓄をする、保険に加入するなど、具体的に対策を立てることで、徐々に解消されていくのではないかと思います。そして、できれば一年に一回、最低でもお子様が進学する都度など、家計の状況を見直して、軌道修正していくといいでしょう。少しずつでもいいですから、いまできることを確実にやっていくことが、将来につながるはずです。

 

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