家計診断Q&A

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住宅資金・返済
山下さん顔写真 FP:山下和之

長らくマイホーム関連の不動産会社、金融機関、そして実際にマイホームを買われた一般の方々など、多方面の取材に携わってきた経験を生かして本音でお答えします。効率的なマイホームの頭金づくりから、ローン破綻に陥らないローンの組み方、少しでもトクする返済方法まで何でもご質問ください。

■ご相談者
相談者(仮名)
大庭 由佳さん
44歳。由佳さんはご自宅で会社経営。ご主人(55歳)は会社員。15年前に買った土地に12年前に一戸建てを建設。
貯金がローン残高を上回りました。ローンを一括返済した方がいいでしょうか。
15年ほど前に買った土地に3年後に一戸建てを建てました。現在、建物に関するローン残高が1480万円、土地関係が300 万円ほどです。この自宅で会社を経営していて、年収は1000万円ほどになり、貯金も2000万円になりました(主人の年収、貯蓄は別)。銀行に預けていてもほとんど利息がつかないし、ペイオフ解禁で万一のときにはソンするのではないかという心配もあります。ローンを一括返済したほうがいいでしょうか。でも、その一方では会社を経営しているので、将来会社の経営が苦しくなったとき、手元にお金がないと困るのではないかという不安もあります。それに、会社から私個人が毎月8万円の家賃収入をとっている関係で、一括返済してしまうと節税メリットもなくなるのではという懸念もあります。どうすればいいでしょうか。


・松本さんのマイホーム履歴
15年前に約170m2の土地購入     購入価格5000万円
12年前に約14m2の一戸建て建設     建設価格5000万円

・住宅ローンの現状
建物部分   ローン残高1480万円   年利2.3 %の変動金利型
  毎月返済額10万3000円(ボーナス返済なし)
土地部分   ローン残高300万円   年利2.3 %の変動金利型
  毎月返済額約3万円(ボーナス返済なし)
■アドバイス
低金利の時代は、残債の返済を早める方がメリットは大きい

大庭さんは2000万円の預金を住宅ローンの返済に回したほうがいいのか、手元に残しておくべきか、あるいは投資に回すべきかとあれこれ悩んでいらっしゃいます。その悩みを整理すると次のようなります。

1. 会社の経営が危うくなったときに備えて社長貸越用に手元預金はできるだけ多いほうがいいのではないか
2. 会社から家賃収入を得ているので、現状のまま不動産所得の損益通算で所得税の節税を図ったほうがいいのではないか
3. ローンの返済に回すより将来に備えて資産形成を図ったほうがいいのではないか

ということのようです。これらの悩みを検証しながら、どうすべきかを考えていきましょう。

いざとなったら住宅を担保に借入も可能

まず1.に関してですが、たしかに会社の経営が危うくなったとき、社長が現金を持っていればそれを会社に貸し出して難局を乗り切ることができます。その点ではある程度現金を残しておくのがいいでしょうが、預金金利の低さを考えるとどうでしょうか。いま住宅ローンを一括返済しておけば、会社の経営が困ったときには社長が自宅を担保に銀行から融資を受けて、それを会社に貸すことも可能です。貸し渋り時代といっても、大庭さんのお住まいは人気の高い住宅地にあり、担保評価は極めて高いとみられますから、まずは問題なく借りられるでしょう。その点を考慮すれば、金利の低い預金を残しておくより、一括返済するほうが得策だと思います。

既に節税効果はなくなっている

次に2.の不動産経営による所得税の節税に関してですが、残念ながらすでに大庭さんの不動産所得は黒字になっています。年間の賃貸収入が8万円×12カ月の96万円。これに対して差し引ける経費は減価償却約35万円、借入金利息は約7万円だそうですから、むしろ所得を増やす結果になっています。ローンを一括返済してもほとんど変わりはないでしょう。

プラスアルファの私的年金の準備法を研究

3番目の将来に備えた資産形成ですが、これは十分考慮に値すると思います。大庭さんご自身はまだ44歳ですが、ご主人は55歳。定年後の収入確保や資産形成について考えておくべき時期でしょう。ペイオフで銀行に大金を預けておくのは不安ですし、しかも利回りは極めて低い。公的年金だけでは豊かな老後を送れる環境ではありませんから、プラスαの私的年金を考えておいたほうがいいかもしれません。その一つとして、最近は都心部でのマンション経営が静かなブームになっています。特に50歳代、60歳代の人たちが現金で新築ワンルームマンションを買って、安定的な家賃収入の確保を目指す人が増えているそうです。2000万円のお金があれば新築を買うことができます。物件にもよりますが年間の家賃収入が100 万円とすれば利回りは5%ということです。東京カンテイの調べでは、首都圏の新築の平均利回りは5%程度、中古だと10%近くに達しています。将来の資産価値には若干の不安もありますが、10年、20年の長いスパンで考えれば、十分に利回りで投下資本を解消できるわけです。

以上を整理すると、基本は住宅ローンの一括返済を行う。場合によっては将来の資産形成のために回す手もあり……ということになりそうです。

一括返済で252万円の特に将来金利があがればさらにお得に

参考までに、現在の金利水準で一括返済した場合と定期預金に預けていた場合で、どんな差がでるかを下に試算しておきました。将来金利動向がどうなるのかによって違いは出てくるでしょうが、それでも1480万円のローンを一括返済しておけば、残り14年間で252万円の支払い利息をカットできる計算です。これに対して、1480万円を年利0.04%の定期預金に預けていた場合、複利計算でも14年後には受け取れる利息は8万円。どちらがトクかは一目瞭然です。今後金利が上がった場合、預金金利よりローン金利の上昇幅のほうが大きくなりますから、その差はもっと大きくなるはずです。

大庭さんの悩みが1.か2.だけなら、断然一括返済をお勧めします。3の資産形成の問題を考慮すると、これはもう大庭さんご自身の判断ということになるでしょうが、ご夫婦ともに高額所得者である点を考慮すれば、いまはまず住宅ローンを一括返済しておき、2〜3年後に再び貯蓄が増えた段階で考える手もありでしょう。大庭さんご夫妻の場合には夫婦別会計だそうですから、ご主人の収入や蓄えから将来への備えを考える方法もあるような気がします。

大庭さんの住宅ローンの一括返済

・現在の建物関係のローン
 (金利が2.3 %で変わらないと想定)


融資の種類 ローン残高 金利 残存期間 毎月返済額
 銀行ローン 1480万円  年利 2.30% 14年 10万3100円

・1480万円を一括返済した場合にトクする利息
  1. 残りの総返済額
    10万3100円×14(年)×12(カ月)=1732万0800円
  2. トクする利息
    1732万円−1480万円=252万円

・1480万円を定期預金に14年間預けておいた場合の利息
  1. 14年間でいくらに増えるか
    1480万円×1.0004×1.0004×−−=1488万円
  2. 14年間でトクする利息
    1488万円−1480万円=8万円




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